この記事でわかること
- kintoneは何で、ERPは何か。kintoneは業務ごとにアプリを自分で作る道具、ERPは受注から入金までを1本でつなぐシステム
- kintoneで作りにくくなるのはどこか。Emposyが自社のERPを作ったとき、ノーコードでは割に合わなかった4か所の実物
- 自社はkintoneで足りるかを判定する4つの問いと、ERPに移る合図・移らなくていい合図
「ERPとkintoneの違い」を調べると機能の比較表が出てきますが、比較表を見ても自社がどちらを選ぶべきかは決まりません。この2つは同じ種類の製品ではないからです。この記事は、kintoneもERPも「名前は聞いたことがある」くらいの人に向けて、それぞれが何なのかから書きます。私たちは自社でERPを作った側ですが、kintoneで足りる会社にはkintoneを勧めます。
kintoneは業務ごとにアプリを自分で作る道具で、ERPは受注から入金までを1本でつなぐシステム
まず、それぞれが何なのかからです。
kintone(キントーン)は、サイボウズという会社が売っているクラウドサービスです。「アプリ」と呼ぶ入力画面と一覧表を、プログラムを書かずに自分で作れます。問い合わせの管理、日報、備品の申請のように、1つの業務に1つのアプリを作って使います。何を作るかは、使う会社が決めます。
ERPは Enterprise Resource Planning の略で、日本語では基幹システムと呼びます。受注・請求・入金・在庫・原価・給与のような会社のお金の数字を、同じデータでつないで1つのシステムで管理する仕組みです。製品を買う形と、自社の業務に合わせて作ってもらう形があります。
この2つは、データの持ち方が違います。
1つの業務に1つのアプリ。何を作るかは使う側が決める。プログラムは書かない
受注・請求・入金・在庫・原価・給与を、同じデータでつないで集計する
だから「どちらが優れているか」という比べ方にはなりません。kintoneでアプリを作っていって、どこまで足りるかという話になります。
※ kintoneはサイボウズの製品ですが、同じ会社のグループウェア(Cybozu Office・Garoon)とは別物です。グループウェアとERPの違いは別の記事に書きました。
kintoneは1つの業務を形にするのが得意で、ERPは流れを1本にするのが得意
kintoneとERPを、同じ項目で並べます。
表の最後の行がいちばん大きな違いです。kintoneは社内の人が作って直せるのが価値で、そこが成立しない会社では利点が消えます。逆にERPは、決まった流れに会社を合わせられるなら手間がかかりません。
Emposyがkintoneのようなノーコードで作るのをやめた、4つの業務
私たち株式会社Emposyは、2026年7月から自社でERPを作って使っています。「kintoneでは絶対に作れない」ではなく、作れるが割に合わないと判断した4か所です。数字は本番データベースの実数(2026年9月10日時点)。
独自の損益計算書——8つの区分と、多段の利益
会計ソフトの標準区分ではなく、売上/売上原価/運営固定費/消費/準資産/投資/営業外収益/営業外費用に組み替え、粗利→組織貢献利益→可処分利益→営業利益と段階的に見る。会計ソフトの40科目を対応させ、1つの科目を金額で分割して複数の区分に振り分ける処理が要る(事務用品費のうちPC購入分だけ「準資産」へ)。ノーコードで組むと、振り分けのルールが人の頭の中に残る
案件の明細ごとに動く金額と入金
案件は「クライアント × フェーズ × 請求明細」で動き、明細(フェーズ)ごとに金額・請求日・入金日が別々。親子のアプリで表現はできるが、「案件の合計」「月別の売上」「事業別の粗利」を同時に出すには、アプリをまたいだ集計を作り込むことになる
人によって書式が違う日報と、そこから出る給与
日報は役員・従業員・タスク型で書式が違い、締めは25日〜翌24日。出勤・退勤・休憩から勤務時間を出して給与を計算し、案件・物件・新規事業ごとの時間配分から案件別の人件費を出す。「人によって画面が違う」「締めが月末でない」「時間から原価が出る」が重なると、人が増えるたびにアプリが増える
外部サービスとの往復
会計ソフトへ見積書・請求書を発行し、クラウドストレージから議事録を読み込み、通知はチャットへ。連携自体はkintoneでもできるが、「どちらが正の台帳か」を決めて往復させる設計になると作り込みが増える
4つに共通しているのは
kintoneが苦しくなるのは、
1つのアプリで完結しない処理が増えたとき
会計ソフトの科目を自社の区分に振り分ける。1つの案件の売上を、月ごとにも事業ごとにも集計する。人によって書式が違う日報から、締め期間をまたいで給与を出す。どれも複数のアプリにデータが散るので、kintoneではアプリ間の集計を自分で作り込むことになります。kintoneが得意なのは、1つの業務を1つのアプリで形にすることです。
自社はkintoneで足りるか、4つの問いで判定する
ここまでの違いを、自社に当てはめる番です。相談を受けるときに確認している4つで、答えると判定が出ます。3つ以上「はい」ならkintoneで足ります。
問い合わせ管理、備品の申請、日報。1つの表に書いて一覧で見られれば済むもの
「案件ごとの合計」までなら問題ない。「案件→月→事業→会社全体」と多段で、予算と実績も並べたいなら境目が近い
金額×数量、期間の日数なら大丈夫。原価の按分、フェーズごとの入金管理、締め期間をまたぐ給与計算になると重い
kintoneの価値は「自分たちで直せる」こと。いないと結局は外注になり、道具の利点が消える
4つに答えると、ここに判定が出ます。
kintoneで足ります。1業務1アプリで作り始めてください。作り替えを検討するのは、次に書く「移る合図」が揃ってからで十分です。
境目が近い。「いいえ」の項目は「またぐ処理」で、ノーコードだと作り込みが増える場所です。上の4か所の実例が、まさにその場所です。
kintoneだけで作るか、ERPと分担するかの3パターン
kintoneを使う会社が、お金の流れをどこに置くかは3通りです。
| やり方 | 中身 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| A. kintoneだけ | 必要な業務アプリを自分たちで作る。会計だけは会計ソフト | 1つの業務で完結するものが中心。作れる人が社内にいる |
| B. kintone + ERP | 取引の流れ(受注→請求→原価)はERPに置き、部署ごとの細かい業務はkintoneで作る | 現場が自分で作りたい業務があり、数字は1本にしたい |
| C. ERPだけ(私たちはこれ) | 取引も日報も1つのシステムに。周辺のSaaSはAPIで繋ぐ | またぐ処理が多い。社内に作る人がいない |
「B. kintone + ERP」を選ぶ会社は多いですが、1つだけ先に決めてください。マスタ(取引先・商品)の正をどちらに置くかです。両方で更新できる状態にすると、二重入力が消えません。うちはCを選び、会計・議事録・通知は外のサービスに残しました。
kintoneからERPに移る合図と、移らなくていい合図
移る合図(3つ揃ったら検討)
- アプリ間の集計を作り込む時間が増えてきた
- 人が増えるたびにアプリが増える
- ライセンス費が人数に比例して伸びている
残す合図(無理に作り替えない)
- 現場が自分でアプリを直している
- 1業務1アプリで足りている
- 作った人が社内にいる
移るときも、全部を移す必要はありません。受注から請求までの流れだけをERPに寄せて、部署ごとの業務はkintoneに残す(上のBの形)で足りることが多い。作り替えの範囲を絞るほど、費用も期間も小さくなります。
この記事を書いた会社の仕事
この記事の判定を、御社の業務に当てはめるのが相談の中身です
4つの判定で3つ以上「はい」なら、kintoneで作った方が速いとお伝えします。またぐ処理が多い場合は、どこまでをERPに寄せて、どこをkintoneに残すかの線を一緒に引きます。全部を作り替える提案はしません。60分の無料相談で、いま使っているツールと、いちばん手間のかかっている作業を教えてください。しつこい営業はしません。
よくある質問
kintoneでERPは作れますか?
作れます。ただし「またぐ処理」が増えるほど作り込みが必要になります。目安は本文の4つの判定で、3つ以上「はい」なら十分です。多段の集計、科目の振り分け、締め期間をまたぐ給与計算が要るなら、その部分だけ別に持つ方が結果的に安くなります。
ERPとkintone、費用はどちらが安いですか?
利用者数で逆転します。kintoneは1人あたりの月額なので、使う人が増えるほど伸びます。ERPは初期費用が高く、月額のライセンス費がない。5年の総額で比べてください。目安は費用の記事に書いています。
kintoneとERPを連携させるのはどうですか?
現実的な選択です(本文のB)。ただしマスタの正をどちらに置くかを先に決めてください。両方で取引先を登録できる状態にすると、二重管理が残ります。
作れる人が社内にいないのですが
その場合、kintoneの利点(自分たちで直せる)が消えます。外注してノーコードで作ってもらうより、業務に合わせて作ってもらう方が、直し方も含めて相談できることが多いです。
まとめ
出典:当社のERPの本番データベース(2026年9月10日時点。PL区分8・科目40・事業区分23・予算558行・実績1,621行・案件181件・明細178行・状態履歴479件・日報2,152日分・時給プロフィール59件・原価率40件・給与調整28件・時間配分1,672行・会計ソフト発行88件・議事録121本)。kintoneの仕様はサイボウズの公式情報を参照してください。取引先名・個人名・人数は伏せています。