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導入の判断

ERPとkintoneの違い——1業務ずつ作るか、流れを1本にするか

kintoneは業務ごとのアプリを自分で作る道具で、ERPは受注から入金までを1つのシステムでつなぐ仕組みです。どちらも名前しか知らない人向けに、違いと、kintoneで足りる会社の見分け方を書きます。kintoneで足りる会社には、そう書きます。

公開 2026年9月5日更新 2026年9月15日木谷 真也(株式会社Emposy 代表取締役)読了 約12分
導入の判断 ERPとkintone、 何が違うのか 1業務ずつ作るか、流れを1本にするか。足りるかの判定つき ERP開発通信 by 株式会社Emposy kintoneで足りるかの4つの判定 1業務 1段まで 単純な計算 3つ以上なら kintone 境目は「またぐ処理」 科目・案件・締め・社外をまたぐと重い

この記事でわかること

  • kintoneは何で、ERPは何か。kintoneは業務ごとにアプリを自分で作る道具、ERPは受注から入金までを1本でつなぐシステム
  • kintoneで作りにくくなるのはどこか。Emposyが自社のERPを作ったとき、ノーコードでは割に合わなかった4か所の実物
  • 自社はkintoneで足りるかを判定する4つの問いと、ERPに移る合図・移らなくていい合図

「ERPとkintoneの違い」を調べると機能の比較表が出てきますが、比較表を見ても自社がどちらを選ぶべきかは決まりません。この2つは同じ種類の製品ではないからです。この記事は、kintoneもERPも「名前は聞いたことがある」くらいの人に向けて、それぞれが何なのかから書きます。私たちは自社でERPを作った側ですが、kintoneで足りる会社にはkintoneを勧めます

kintoneは業務ごとにアプリを自分で作る道具で、ERPは受注から入金までを1本でつなぐシステム

まず、それぞれが何なのかからです。

kintone(キントーン)は、サイボウズという会社が売っているクラウドサービスです。「アプリ」と呼ぶ入力画面と一覧表を、プログラムを書かずに自分で作れます。問い合わせの管理、日報、備品の申請のように、1つの業務に1つのアプリを作って使います。何を作るかは、使う会社が決めます。

ERPは Enterprise Resource Planning の略で、日本語では基幹システムと呼びます。受注・請求・入金・在庫・原価・給与のような会社のお金の数字を、同じデータでつないで1つのシステムで管理する仕組みです。製品を買う形と、自社の業務に合わせて作ってもらう形があります。

この2つは、データの持ち方が違います。

kintone業務ごとにアプリを作る

1つの業務に1つのアプリ。何を作るかは使う側が決める。プログラムは書かない

ERP(基幹システム)受注から入金までを1本でつなぐ

受注・請求・入金・在庫・原価・給与を、同じデータでつないで集計する

だから「どちらが優れているか」という比べ方にはなりません。kintoneでアプリを作っていって、どこまで足りるかという話になります。

※ kintoneはサイボウズの製品ですが、同じ会社のグループウェア(Cybozu Office・Garoon)とは別物です。グループウェアとERPの違いは別の記事に書きました。

kintoneは1つの業務を形にするのが得意で、ERPは流れを1本にするのが得意

kintoneとERPを、同じ項目で並べます。

ERP(基幹システム)
kintone
正体
受注・請求・在庫・会計が最初から入っている完成品、または業務に合わせて作った専用システム
業務アプリを自分たちで作る道具。何を作るかは使う側が決める
買った直後
業務の流れが入っている。合わせるのは会社の側
空っぽ。作るまで何も起きない
得意
取引の流れを1本にすること(受注→請求→入金→会計)
1つの業務を、その部署のやり方どおりに形にすること
苦手
自社独自のやり方に合わせること(合わせるとカスタマイズ費)
複数の業務をまたいで数字を積み上げること
作る主体
ベンダーか開発会社
社内の担当者(外部に頼むこともできる)

表の最後の行がいちばん大きな違いです。kintoneは社内の人が作って直せるのが価値で、そこが成立しない会社では利点が消えます。逆にERPは、決まった流れに会社を合わせられるなら手間がかかりません。

Emposyがkintoneのようなノーコードで作るのをやめた、4つの業務

私たち株式会社Emposyは、2026年7月から自社でERPを作って使っています。「kintoneでは絶対に作れない」ではなく、作れるが割に合わないと判断した4か所です。数字は本番データベースの実数(2026年9月10日時点)。

実例 1

独自の損益計算書——8つの区分と、多段の利益

8区分40科目23事業区分1,621実績行

会計ソフトの標準区分ではなく、売上/売上原価/運営固定費/消費/準資産/投資/営業外収益/営業外費用に組み替え、粗利→組織貢献利益→可処分利益→営業利益と段階的に見る。会計ソフトの40科目を対応させ、1つの科目を金額で分割して複数の区分に振り分ける処理が要る(事務用品費のうちPC購入分だけ「準資産」へ)。ノーコードで組むと、振り分けのルールが人の頭の中に残る

実例 2

案件の明細ごとに動く金額と入金

181案件178明細行最大20行/案件479状態履歴

案件は「クライアント × フェーズ × 請求明細」で動き、明細(フェーズ)ごとに金額・請求日・入金日が別々。親子のアプリで表現はできるが、「案件の合計」「月別の売上」「事業別の粗利」を同時に出すには、アプリをまたいだ集計を作り込むことになる

実例 3

人によって書式が違う日報と、そこから出る給与

59時給プロフィール40原価率28給与調整1,672時間配分

日報は役員・従業員・タスク型で書式が違い、締めは25日〜翌24日。出勤・退勤・休憩から勤務時間を出して給与を計算し、案件・物件・新規事業ごとの時間配分から案件別の人件費を出す。「人によって画面が違う」「締めが月末でない」「時間から原価が出る」が重なると、人が増えるたびにアプリが増える

実例 4

外部サービスとの往復

88会計ソフトへ発行121議事録を読込

会計ソフトへ見積書・請求書を発行し、クラウドストレージから議事録を読み込み、通知はチャットへ。連携自体はkintoneでもできるが、「どちらが正の台帳か」を決めて往復させる設計になると作り込みが増える

4つに共通しているのは

kintoneが苦しくなるのは、
1つのアプリで完結しない処理が増えたとき

会計ソフトの科目を自社の区分に振り分ける。1つの案件の売上を、月ごとにも事業ごとにも集計する。人によって書式が違う日報から、締め期間をまたいで給与を出す。どれも複数のアプリにデータが散るので、kintoneではアプリ間の集計を自分で作り込むことになります。kintoneが得意なのは、1つの業務を1つのアプリで形にすることです。

自社はkintoneで足りるか、4つの問いで判定する

ここまでの違いを、自社に当てはめる番です。相談を受けるときに確認している4つで、答えると判定が出ます。3つ以上「はい」ならkintoneで足ります

kintoneで足りるかの4つの問い3つ以上「はい」なら足りる
Q11つの画面(アプリ)で完結する業務が中心ですか?

問い合わせ管理、備品の申請、日報。1つの表に書いて一覧で見られれば済むもの

Q2数字を積み上げる先は1段までですか?

「案件ごとの合計」までなら問題ない。「案件→月→事業→会社全体」と多段で、予算と実績も並べたいなら境目が近い

Q3計算のルールは単純ですか?

金額×数量、期間の日数なら大丈夫。原価の按分、フェーズごとの入金管理、締め期間をまたぐ給与計算になると重い

Q4作る人・直す人が社内にいますか?

kintoneの価値は「自分たちで直せる」こと。いないと結局は外注になり、道具の利点が消える

4つに答えると、ここに判定が出ます。

kintoneで足ります。1業務1アプリで作り始めてください。作り替えを検討するのは、次に書く「移る合図」が揃ってからで十分です。

境目が近い。「いいえ」の項目は「またぐ処理」で、ノーコードだと作り込みが増える場所です。上の4か所の実例が、まさにその場所です。

kintoneだけで作るか、ERPと分担するかの3パターン

kintoneを使う会社が、お金の流れをどこに置くかは3通りです。

やり方中身向いている会社
A. kintoneだけ必要な業務アプリを自分たちで作る。会計だけは会計ソフト1つの業務で完結するものが中心。作れる人が社内にいる
B. kintone + ERP取引の流れ(受注→請求→原価)はERPに置き、部署ごとの細かい業務はkintoneで作る現場が自分で作りたい業務があり、数字は1本にしたい
C. ERPだけ(私たちはこれ)取引も日報も1つのシステムに。周辺のSaaSはAPIで繋ぐまたぐ処理が多い。社内に作る人がいない

「B. kintone + ERP」を選ぶ会社は多いですが、1つだけ先に決めてください。マスタ(取引先・商品)の正をどちらに置くかです。両方で更新できる状態にすると、二重入力が消えません。うちはCを選び、会計・議事録・通知は外のサービスに残しました。

kintoneからERPに移る合図と、移らなくていい合図

移る合図(3つ揃ったら検討)

  • アプリ間の集計を作り込む時間が増えてきた
  • 人が増えるたびにアプリが増える
  • ライセンス費が人数に比例して伸びている

残す合図(無理に作り替えない)

  • 現場が自分でアプリを直している
  • 1業務1アプリで足りている
  • 作った人が社内にいる

移るときも、全部を移す必要はありません。受注から請求までの流れだけをERPに寄せて、部署ごとの業務はkintoneに残す(上のBの形)で足りることが多い。作り替えの範囲を絞るほど、費用も期間も小さくなります。

この記事を書いた会社の仕事

この記事の判定を、御社の業務に当てはめるのが相談の中身です

4つの判定で3つ以上「はい」なら、kintoneで作った方が速いとお伝えします。またぐ処理が多い場合は、どこまでをERPに寄せて、どこをkintoneに残すかの線を一緒に引きます。全部を作り替える提案はしません。60分の無料相談で、いま使っているツールと、いちばん手間のかかっている作業を教えてください。しつこい営業はしません。

よくある質問

kintoneでERPは作れますか?

作れます。ただし「またぐ処理」が増えるほど作り込みが必要になります。目安は本文の4つの判定で、3つ以上「はい」なら十分です。多段の集計、科目の振り分け、締め期間をまたぐ給与計算が要るなら、その部分だけ別に持つ方が結果的に安くなります。

ERPとkintone、費用はどちらが安いですか?

利用者数で逆転します。kintoneは1人あたりの月額なので、使う人が増えるほど伸びます。ERPは初期費用が高く、月額のライセンス費がない。5年の総額で比べてください。目安は費用の記事に書いています。

kintoneとERPを連携させるのはどうですか?

現実的な選択です(本文のB)。ただしマスタの正をどちらに置くかを先に決めてください。両方で取引先を登録できる状態にすると、二重管理が残ります。

作れる人が社内にいないのですが

その場合、kintoneの利点(自分たちで直せる)が消えます。外注してノーコードで作ってもらうより、業務に合わせて作ってもらう方が、直し方も含めて相談できることが多いです。

まとめ

kintoneはアプリ単位、ERPは流れ単位kintoneは1つの業務に1つのアプリを作る。ERPは受注から入金までを同じデータでつないで集計する
1つのアプリで完結するならkintone問い合わせ管理、備品の申請、日報。1つの表に書いて一覧で見られれば済む業務は、kintoneの方が速くて安い
複数のアプリにまたがると重くなる会計の科目を自社の区分に振り分ける。案件の売上を月と事業の両方で集計する。この種の処理が増えると、kintoneでは集計を作り込むことになる
全部を移す必要はない受注から請求までの流れだけをERPに寄せて、部署ごとの業務はkintoneに残す。この形がいちばん多い
併用するなら、取引先マスタの正を決めるkintoneとERPの両方で取引先を登録できる状態にすると、名前の表記が割れて集計が合わなくなる

出典:当社のERPの本番データベース(2026年9月10日時点。PL区分8・科目40・事業区分23・予算558行・実績1,621行・案件181件・明細178行・状態履歴479件・日報2,152日分・時給プロフィール59件・原価率40件・給与調整28件・時間配分1,672行・会計ソフト発行88件・議事録121本)。kintoneの仕様はサイボウズの公式情報を参照してください。取引先名・個人名・人数は伏せています。

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書いた人

木谷 真也(株式会社Emposy 代表取締役)

自社の基幹システムの要件定義書を自分で書き、毎日使っている。営業・経理・案件管理・日報・AI相談までを自社開発の基幹システム1つに集約して会社を回し、その経験をもとに中堅・中小企業の自社専用ERP開発を請けている。東京・大阪。サービスについて

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