この記事でわかること
- もとの「SaaS is Dead」の意味と、数字から見る実情
- それでもSaaSの市場と売上は伸びている
- Commune・Studioへの不正アクセスで生まれた、新しい「SaaS is Dead」
「SaaS is Dead(SaaSは終わった)」は、2024年末から広まった言葉です。AIエージェントがSaaSの仕事を代わりにこなすようになり、SaaSの売り方が成り立たなくなる、という意味でした。
ところが数字を見ると、SaaSは死んでいません。市場も大手の売上も伸びています。そして2026年10月、SaaSへの不正アクセスが続き、この言葉は「大事なデータを、外のサービスに預けておいていいのか」という別の意味で語られ始めました。
そもそも「SaaS is Dead」とは
始まりは、マイクロソフトCEOの発言
きっかけは2024年12月、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOがポッドキャスト「BG2」で語った「ビジネスアプリケーションは、AIエージェントの時代には崩壊するだろう」という発言です(Business Insider Japan)。本人は「SaaS is Dead」とは言っていませんが、この短い言い方で広まりました。
人が画面を操作して使うSaaSの仕事を、AIエージェントが直接こなすようになる。そうなれば「1人あたり月いくら」で稼ぐSaaSの売り方は成り立たない、という見立てです。
2026年2月、株価が先に反応した
2026年1月、Anthropicが業務をAIに任せる「Claude Cowork」を出し、法務などの業務向けの機能を加えると、2月初めに世界のソフトウェア株が急落しました。短期間で約2,850億ドル(約43兆円)の時価総額が消えたとされます(マイナビニュース TECH+)。日本でも2月4日、SaaS各社の株が1日で1割程度下落しました(東証日報をもとにしたJIOの集計)。
ただ、下げは続いていません。freeeは8月の決算発表のあとに大きく戻し、10月下旬には3本とも1月初めの水準を上回っています。
実際は、SaaSはまだ伸びている
株価回復後、SaaSの市場と売上は伸び続けています。
市場は、世界でも日本でも広がっている
総務省の情報通信白書(令和8年版)によると、世界のSaaS市場は2023年の約2,800億ドルから、2030年には約8,870億ドルと約3倍に広がる見込みです。
国内でも、SaaSを含むパブリッククラウドの市場は2025年に4兆4,930億円(前年比+20.3%)となり、2030年には10兆962億円と約2.2倍になる見込みです(IDC Japan)。
実際に、株価が急落した後の決算でも、主なSaaS企業は売上を伸ばしています。
| 会社 | 期間 | 売上 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| Salesforce | 26年5〜7月 | 113億ドル | +11% |
| ServiceNow | 26年4〜6月 | 39.9億ドル | +24% |
| freee | 26年6月期 | 424億円 | +27.6% |
| マネーフォワード | 25年12月〜26年5月 | 290億円 | +24.8% |
出典:Salesforce/ServiceNow/freee 決算短信/マネーフォワード 決算短信
SaaSが伸びている理由
- クラウドが、事業に欠かせない道具になった総務省の白書は、クラウドがビジネスに不可欠になったことと、企業が柔軟に増やせる仕組みを求めていることを挙げています
- 人手不足を、システムで補う会社が増えた富士キメラ総研は、人手不足対策やデジタル改革の推進に伴い、国内でSaaSの導入が広がるとみています(@IT)
- AIが、むしろSaaSの売上を押し上げている白書は生成AIの利用拡大も成長を後押ししているとしています。SalesforceのAIエージェント「Agentforce」は、年間契約額が15億ドルを超えました
著名な経営者も「SaaSはすぐには死なない」と見ている
「AIに置き換えられてSaaSが終わる」という意味の「SaaS is Dead」は、少なくとも数字の上ではまだ起きていません。
今度こそSaaSは死ぬのか——不正アクセスが生んだ新しい「SaaS is Dead」
ところが、最近代わりに出てきたのが、別の意味の「SaaS is Dead」です。ITmedia NEWSは10月21日の記事で、議論の中心が重要なデータを外部のツールに預けるべきかに移ったと指摘しています。
2026年10月、CommuneとStudioで大規模な不正アクセス
10月、国内で広く使われている2つのSaaSが、相次いで不正アクセスを受けました。どちらも、使っていた企業や官公庁の情報まで流出した可能性があります。
10月27日時点の公式発表をもとに整理します(原因や件数は調査中の部分があります)。
SaaSが狙われる理由
Studioでは、利用企業が登録した外部サービスのAPIキー・トークンや、スプレッドシート連携の認証情報も流出した可能性があります。暗号化していた情報も、復号の鍵が同じ侵入で読まれたと説明されています。
APIキーやトークンは、SaaS同士をつなぐ「合鍵」です。盗まれると、攻撃者はそのSaaSの外にあるシステムにも入れます。
これから考えるべきリスク
金融庁と日本銀行は2026年5月、AIの進歩によって脆弱性が短期間に大量に見つかり、発見から攻撃までの期間も大幅に縮まり得るとして、金融機関に至急の点検を求めました(金融庁)。この脅威は、自社のシステムだけでなく、使っている外部のソフトウェアやサービスにも同じように及ぶとされています。これからは「SaaSを使うかどうか」より、どのサービスに何のデータと合鍵を預けているかを把握し、破られたときにすぐ止められるようにしておくことが、経営として考えるべきリスクになります。
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統合したい業務と、いちばん手間のかかっている作業を教えてください。ERP化すべきか、SaaSで足りるかもこの場でお伝えします。しつこい営業はしません。
参考:Box CEO「SaaSは死んだ」に反論(Business Insider Japan)/「SaaSの死」をめぐる議論(Forbes JAPAN)/AIエージェント時代にSaaSは本当に終わるのか?(マイナビニュース TECH+)/SaaSは死ぬのか?(JIO)/令和8年版 情報通信白書 クラウドサービス(総務省)/国内SaaS市場の調査(@IT/富士キメラ総研)/株価(Yahoo!ファイナンス)/Salesforce Q2 FY27 Results/ServiceNow Q2 2026 Results/2026年6月期 決算短信(freee)/2026年11月期 第2四半期決算短信(マネーフォワード)/不正アクセス急増は"SaaS離れ"を招くか? 露呈したもう1つの「SaaS is Dead」リスク(ITmedia NEWS)/「Commune」に不正アクセス、推計約30万人の個人情報が漏えい(INTERNET Watch)/委託先への不正アクセスに関するお知らせ(LINEヤフー)/Studioにおける不正アクセスに関するご案内(Studio)/Studio株式会社における不正アクセスによる個人情報の漏えいの可能性について(デジタル庁)/Our evaluation of Claude Mythos Preview's cyber capabilities(AISI)/フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応に係る要請(金融庁・日本銀行)
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