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導入の判断

「SaaS is Dead」は本当か
——数字で見る実情と、不正アクセスで生まれた新しい意味

公開 2026年10月27日株式会社Emposy 編集部読了 約9分
導入の判断 「SaaS is Dead」 の新しい意味 問われるのは、データの「預け先」の安全性 オールインワンERP開発通信 by 株式会社Emposy 2026年10月に起きたこと SaaS Commune 不正アクセス 推計 約30.7万人 SaaS Studio 不正アクセス 全登録ユーザー・APIキーも 預けても、自社でも、狙われる 出典:各社公式発表 見るべきは「何をどこに預けたか」

この記事でわかること

  • もとの「SaaS is Dead」の意味と、数字から見る実情
  • それでもSaaSの市場と売上は伸びている
  • Commune・Studioへの不正アクセスで生まれた、新しい「SaaS is Dead」

「SaaS is Dead(SaaSは終わった)」は、2024年末から広まった言葉です。AIエージェントがSaaSの仕事を代わりにこなすようになり、SaaSの売り方が成り立たなくなる、という意味でした。

ところが数字を見ると、SaaSは死んでいません。市場も大手の売上も伸びています。そして2026年10月、SaaSへの不正アクセスが続き、この言葉は「大事なデータを、外のサービスに預けておいていいのか」という別の意味で語られ始めました。

そもそも「SaaS is Dead」とは

始まりは、マイクロソフトCEOの発言

きっかけは2024年12月、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOがポッドキャスト「BG2」で語った「ビジネスアプリケーションは、AIエージェントの時代には崩壊するだろう」という発言です(Business Insider Japan)。本人は「SaaS is Dead」とは言っていませんが、この短い言い方で広まりました。

人が画面を操作して使うSaaSの仕事を、AIエージェントが直接こなすようになる。そうなれば「1人あたり月いくら」で稼ぐSaaSの売り方は成り立たない、という見立てです。

2026年2月、株価が先に反応した

2026年1月、Anthropicが業務をAIに任せる「Claude Cowork」を出し、法務などの業務向けの機能を加えると、2月初めに世界のソフトウェア株が急落しました。短期間で約2,850億ドル(約43兆円)の時価総額が消えたとされます(マイナビニュース TECH+)。日本でも2月4日、SaaS各社の株が1日で1割程度下落しました(東証日報をもとにしたJIOの集計)。

世界のソフトウェア株で消えた時価総額約43兆円出典:マイナビニュース TECH+
Sansanの下落率(2月4日)−13.5%出典:東証日報(JIO集計)
freeeの下落率(2月4日)−12.5%出典:東証日報(JIO集計)
freee Sansan 米国ソフトウェア株 2月 急落 60 80 100 120 140 1月初め=100 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 2026年 137 freee 121 Sansan 106 米ソフト株 一時 約4割安
図1 1月初めを100とした株価(週ごとの終値)。2月にそろって急落し、日本の2社は一時4割近く下げた。夏以降は持ち直している。出典:Yahoo!ファイナンス。米国ソフトウェア株はiShares Expanded Tech-Software ETF(IGV)

ただ、下げは続いていません。freeeは8月の決算発表のあとに大きく戻し、10月下旬には3本とも1月初めの水準を上回っています。

実際は、SaaSはまだ伸びている

株価回復後、SaaSの市場と売上は伸び続けています。

市場は、世界でも日本でも広がっている

総務省の情報通信白書(令和8年版)によると、世界のSaaS市場は2023年の約2,800億ドルから、2030年には約8,870億ドルと約3倍に広がる見込みです。

(億ドル) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 予測 →実績 2023 2,800 2024 2025 4,290 2026 2027 2028 2029 2030 8,870 2023年の約3.2倍
図2 世界のパブリッククラウド市場のうち、SaaSの売上高。2025年以降は予測。出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」図表Ⅱ-1-8-3(Statista Market Insightsをもとに作成)

国内でも、SaaSを含むパブリッククラウドの市場は2025年に4兆4,930億円(前年比+20.3%)となり、2030年には10兆962億円と約2.2倍になる見込みです(IDC Japan)。

実際に、株価が急落した後の決算でも、主なSaaS企業は売上を伸ばしています。

会社期間売上前年比
Salesforce26年5〜7月113億ドル+11%
ServiceNow26年4〜6月39.9億ドル+24%
freee26年6月期424億円+27.6%
マネーフォワード25年12月〜26年5月290億円+24.8%

出典:Salesforce/ServiceNow/freee 決算短信/マネーフォワード 決算短信

SaaSが伸びている理由

  1. クラウドが、事業に欠かせない道具になった総務省の白書は、クラウドがビジネスに不可欠になったことと、企業が柔軟に増やせる仕組みを求めていることを挙げています
  2. 人手不足を、システムで補う会社が増えた富士キメラ総研は、人手不足対策やデジタル改革の推進に伴い、国内でSaaSの導入が広がるとみています(@IT)
  3. AIが、むしろSaaSの売上を押し上げている白書は生成AIの利用拡大も成長を後押ししているとしています。SalesforceのAIエージェント「Agentforce」は、年間契約額が15億ドルを超えました

著名な経営者も「SaaSはすぐには死なない」と見ている

(AIがソフトウェアに取って代わるという考えは)世界で最も非論理的なこと

ジェンスン・フアン(NVIDIA CEO)/Forbes JAPAN(2026年2月)

安全性を担保したAI、業務手順、セキュリティー、データ管理などの機能を実現するには、AIのレイヤーだけでなく、ソフトウェアのレイヤーが必ず必要だ。(中略)SaaSが消えてなくなることはないと思う

アーロン・レヴィ(Box CEO)/Business Insider Japan(2025年11月)

「AIに置き換えられてSaaSが終わる」という意味の「SaaS is Dead」は、少なくとも数字の上ではまだ起きていません。

今度こそSaaSは死ぬのか——不正アクセスが生んだ新しい「SaaS is Dead」

ところが、最近代わりに出てきたのが、別の意味の「SaaS is Dead」です。ITmedia NEWSは10月21日の記事で、議論の中心が重要なデータを外部のツールに預けるべきかに移ったと指摘しています。

これまでの SaaS is Dead 2024年末〜 AIがSaaSの仕事を 代わりにこなす 月額料金 SaaSに払うお金が 減るはず 結果 SaaSは死ななかった 売上も市場も伸びた ところが… 新しい SaaS is Dead 2026年10月〜 SaaS SaaSが 不正アクセスを受ける ! ! ! 使っている会社に まとめて被害が及ぶ これから ? 今度こそ死ぬ? 預け先が問われ始めた
図3 これまでの「SaaS is Dead」では、SaaSは死ななかった。新しい「SaaS is Dead」は、不正アクセスでデータの預け先そのものが問われる話。

2026年10月、CommuneとStudioで大規模な不正アクセス

10月、国内で広く使われている2つのSaaSが、相次いで不正アクセスを受けました。どちらも、使っていた企業や官公庁の情報まで流出した可能性があります。

10月27日時点の公式発表をもとに整理します(原因や件数は調査中の部分があります)。

Commune コミュニティ 10月5日18時頃に侵入、翌6日に検知 攻撃者 1 招待リンクを 手に入れる 2 会員登録して 管理者になりすます 3 会員情報を取得し、 データを上書き 対象 推計 約30.7万人 うちメールアドレスを含むのは約12.6万人 LINEヤフー Communeで「DS.LAB」を運営 利用者1,750名の情報が、閲覧・取得された可能性 Studio Web制作 9月30日〜、10月14日の対処まで 攻撃者 1 一部機能の 脆弱性を突く 2 利用企業の データに入り込む 3 連携用のAPIキーも 流出した可能性 対象 全登録ユーザー 件数は精査中 デジタル庁 ホームページの一部をStudioで運営 問い合わせ最大13,323件・アカウント情報35件が漏えいの可能性
図4 CommuneとStudioで起きたこと。Communeは招待リンク、Studioは機能の脆弱性が入口になった。Studioの脆弱性の中身は未公表で、外部の専門機関が調査中。出典:INTERNET Watch/LINEヤフー/Studio公式/デジタル庁

SaaSが狙われる理由

Studioでは、利用企業が登録した外部サービスのAPIキー・トークンや、スプレッドシート連携の認証情報も流出した可能性があります。暗号化していた情報も、復号の鍵が同じ侵入で読まれたと説明されています。

APIキーやトークンは、SaaS同士をつなぐ「合鍵」です。盗まれると、攻撃者はそのSaaSの外にあるシステムにも入れます。

SaaSに預けた合鍵が、別のシステムの入口になる 攻撃者 ① 欠陥を突く SaaS 預けている合鍵 APIキートークン連携の鍵 ② 合鍵を盗まれる 顧客管理CRM 表計算スプレッドシート 連携している別のサービス ③ 合鍵で連携先にも入る 2026年10月 Studio:外部サービスのAPIキー・スプレッドシート連携の情報も対象になった。 暗号化していても、復号の鍵が同じ侵入で読まれれば守れない(Studio公式の説明)。 合鍵の再発行と古い鍵の無効化は、利用している会社の側でしかできない。
図5 SaaS同士をつなぐほど、合鍵の置き場所が増える。1つの侵入が、連携先の入口になる。

これから考えるべきリスク

金融庁と日本銀行は2026年5月、AIの進歩によって脆弱性が短期間に大量に見つかり、発見から攻撃までの期間も大幅に縮まり得るとして、金融機関に至急の点検を求めました(金融庁)。この脅威は、自社のシステムだけでなく、使っている外部のソフトウェアやサービスにも同じように及ぶとされています。これからは「SaaSを使うかどうか」より、どのサービスに何のデータと合鍵を預けているかを把握し、破られたときにすぐ止められるようにしておくことが、経営として考えるべきリスクになります。

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統合したい業務と、いちばん手間のかかっている作業を教えてください。ERP化すべきか、SaaSで足りるかもこの場でお伝えします。しつこい営業はしません。

参考:Box CEO「SaaSは死んだ」に反論(Business Insider Japan)/「SaaSの死」をめぐる議論(Forbes JAPAN)/AIエージェント時代にSaaSは本当に終わるのか?(マイナビニュース TECH+)/SaaSは死ぬのか?(JIO)/令和8年版 情報通信白書 クラウドサービス(総務省)/国内SaaS市場の調査(@IT/富士キメラ総研)/株価(Yahoo!ファイナンス)/Salesforce Q2 FY27 Results/ServiceNow Q2 2026 Results/2026年6月期 決算短信(freee)/2026年11月期 第2四半期決算短信(マネーフォワード)/不正アクセス急増は"SaaS離れ"を招くか? 露呈したもう1つの「SaaS is Dead」リスク(ITmedia NEWS)/「Commune」に不正アクセス、推計約30万人の個人情報が漏えい(INTERNET Watch)/委託先への不正アクセスに関するお知らせ(LINEヤフー)/Studioにおける不正アクセスに関するご案内(Studio)/Studio株式会社における不正アクセスによる個人情報の漏えいの可能性について(デジタル庁)/Our evaluation of Claude Mythos Preview's cyber capabilities(AISI)/フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応に係る要請(金融庁・日本銀行)

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書いた会社

株式会社Emposy 編集部

自社専用ERPの開発と、AIによる業務自動化を手掛ける開発会社。営業・経理・案件管理・日報・AI相談までを自社開発の基幹システム1つに集約して運営している。東京・大阪。サービスについて

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