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導入の判断

kintoneでERPは作れるか——新しいSaaSの使い方

結論から書くと、kintoneでERPに近いものは作れます。ただ、全部をkintoneで作る必要も、全部をERPに置き換える必要もありません。お金の流れはERPで1本にし、部署ごとの細かい業務はkintoneで作る。業務ごとにSaaSを使い分けるのが、私たちの考える新しい使い方です。自社でERPを作って毎日使っている開発会社の立場で書きます。

公開 2026年9月5日更新 2026年10月30日木谷 真也(株式会社Emposy 代表取締役)読了 約10分
導入の判断 kintoneで ERPは作れるか 新しいSaaSの使い方 オールインワンERP開発通信 by 株式会社Emposy kintoneで足りるかの4つの問い 1業務 1段まで 単純な計算 3つ以上なら kintone 境目は「またぐ処理」 科目・案件・締め・社外をまたぐと重い

この記事でわかること

  • kintoneでERPは作れるのか。作れる。ただし「つなぐ」部分は自分たちで作ることになる
  • 簡単に作れる業務と、作り込みが増える業務の違い。1つの画面で終わるか、画面をまたぐか
  • kintoneで組むと手間が大きくなる4つの業務(当社の実例)
  • 人数が増えると、利用料はどう伸びるか。公式の料金で10人〜100人の年額を計算
  • 自社はkintoneで足りるかを判定する4つの問いと、kintoneとERPの使い分け3通り

「kintoneでERPは作れるか」と聞かれたら、私たちは「作れます」と答えます。そのうえで、どこまで作るかで手間と費用が大きく変わるとお伝えしています。この記事は、自社のERPを作って毎日使い、ほかの会社のERPも作っている開発会社の立場で書きます。kintoneで足りる会社には、そう書きます。

作れる。ただし、業務と業務を「つなぐ」部分は自分で作る

kintoneは業務ごとの画面を作る道具。ERPは受注から入金までを1本につなぐ仕組み。kintoneでERPを作るとは、そのつなぎを自分で作ること

kintoneとERPは、そもそも何か

kintone(キントーン)は、サイボウズという会社のクラウドサービスです。入力画面と一覧表を、プログラムを書かずに自分で作れます。kintoneではこの画面1つを「アプリ」と呼びます。問い合わせの管理、日報、備品の申請のように、1つの業務に1つのアプリを作って使います。

ERPは、受注・請求・入金・原価・給与のような会社のお金に関わる数字を、1つの仕組みでつないで管理するシステムです。日本語では基幹システムとも呼びます。

kintoneで作ると、つなぎ目が自社の仕事になる

kintoneで「受注」「請求」「入金」のアプリを作ること自体は、難しくありません。手間がかかるのは、アプリとアプリのあいだです。受注の金額を請求に引き継ぐ。入金されたら請求を「済み」にする。月ごと・事業ごとに売上を集計する。ERPなら最初から入っているこのつなぎを、kintoneでは自分で作ります。

kintone アプリは1つずつ独立している 問い合わせ 受注 請求 日報 ✕=アプリ同士は自動でつながらない 金額は手で写すか、つなぎを自分で作る ERP お金の流れが最初から1本 受注 請求 入金 会計・集計 同じ金額が、そのまま次へ流れる
図1 kintoneのアプリは1つずつ独立している。受注の金額を請求へ渡すような「つなぎ」は、自分で作り込む。ERPは最初からつながっている。

1つの画面で終わる業務はすぐ作れる。画面をまたぐと作り込みが増える

境目は「その業務が1つのアプリで終わるか」。またぐ処理が増えるほど、プログラムや追加の部品が要る

すぐ作れる業務、作り込みが要る業務

業務の形と例kintoneでの手間
1つの画面で終わる問い合わせ管理、備品の申請、日報、顧客の一覧
小さい画面の操作だけで作れる
別の画面の値を引いてくる受注に顧客名を入れると、住所や担当者が出る
小さい標準の機能(ルックアップ)で足りる
画面をまたいで集計する案件の売上を月別にも事業別にも出す。予算と実績を並べる
大きいプログラムか追加の部品(プラグイン)が要る
ほかのシステムと往復する会計ソフトに請求書を発行し、入金を受け取る
大きいシステム同士を自動でつなぐ仕組みを作る

※ ルックアップ:別のアプリに登録した値を選ぶと、関係する項目がまとめて入る機能。プラグイン:kintoneに機能を足す追加の部品。他社が作ったものを買って入れることが多い。

受注アプリ 請求アプリ 入金アプリ 会計ソフト 123 ●=つなぎ目。金額の引き継ぎや「済み」の更新を作る 月別×事業別の集計 全部のアプリをまたいで作る
図2 受注から会計まで4つ並べると、つなぎ目が3つと、全部をまたぐ集計が1つできる。ここがkintoneで作り込む部分。

私たちが「kintoneでは割に合わない」と判断した4つの業務

どれも作れなくはない。共通点は、1つのアプリで終わらないこと

kintoneで組むと手間が大きくなる4つの業務

私たち株式会社Emposyは、2026年7月から自社で作ったERPを使っています。作る前に、kintoneのような道具で組む案も考えました。そのうえで作れるが割に合わないと判断したのが次の4つです。図のオレンジの部分が、kintoneでは自分で作り込むところです。

会計ソフトの科目自社の区分通信費外注費給与振り分け自分で作る事業A事業B

自社の区分で見る損益

kintoneだと会計ソフトの科目と自社の区分の対応表を別に持ち、実績を取り込むたびに振り分ける計算を作る。1つの科目を金額で2つの区分に分ける処理も作り込みになる。

当社の規模:区分8・科目40・実績1,621行

案件請求① 5月請求② 6月請求③ 7月入金済入金済まだ

案件の明細ごとの金額と入金

kintoneだと1つの案件に請求が何回もあり、明細ごとに請求日と入金日が違う。入金のたびに対応する明細を「済み」にし、案件別・月別・事業別の集計も別に作る。

当社の規模:案件181件・明細178行

日報勤務時間を25日締めで集計給与案件の人件費

日報から出す給与と人件費

kintoneだと人によって書き方が違う日報から勤務時間を拾い、25日〜翌24日の締めで給与を出す。同じ時間を案件ごとの人件費にも振り分ける。

当社の規模:日報2,152日分・時間配分1,672行

自社の仕組み会計ソフト議事録チャット

外のサービスとの往復

kintoneだと会計ソフトへの請求書の発行、議事録の読み込み、チャットへの通知を、それぞれプログラムでつなぐ。どちらの記録を正とするかも決めて作る。

当社の規模:会計ソフトへ発行88件・議事録121本

※ 数字は当社のERPの本番データベース(2026年9月10日時点)。

共通点は「1つのアプリで終わらない」

4つとも、データが複数のアプリに散ります。kintoneで組むなら、アプリ間の集計と引き継ぎを自分で作り、業務が変わるたびに直すことになります。私たちは毎月のようにやり方を変えるので、最初からつながった仕組みを作る方が安いと判断しました。

利用料は人数に比例する。作り込みの費用は別にかかる

kintoneは1人あたりの月額。ERPに近づけるほど、利用料とは別に作る費用と直す手間が増える

公式の料金で、人数ごとの年額を出すと…

kintoneの料金は、使う人数×月額です。いちばん安いライトコースでは、プラグインやほかのシステムとの連携、プログラムでの作り込みが使えません。ERPに近いものを作るならスタンダードコース(1人月1,800円・税抜)が前提になります。

コース1人あたり月額(税抜)最小人数連携・プラグイン
ライト1,000円10人使えない
スタンダード1,800円10人使える
ワイド3,000円1,000人使える
スタンダードコースの年額(税抜・利用料のみ) 21.6万円64.8万円108万円216万円 10人30人50人100人
図3 1,800円×人数×12か月で計算。5年なら30人で324万円。プラグインや作り込みの費用は含まない。

見落としやすいのは、作り込みと直す手間

上の金額は利用料だけです。またぐ処理を作るなら、プラグインの購入費や、プログラムを外注する費用が別にかかります。さらに、業務が変わるたびに直す手間が続きます。kintoneの良さは「社内の人が自分で直せる」ことです。作り込みが増えて外注しないと直せなくなると、その良さが消えます。

比べるときは、5年分の利用料+作り込みの費用+直す手間を並べてください。ERPの費用の内訳と見積書の見方は別の記事に書いています。

自社はkintoneで足りるか——4つの問いと、3つの使い分け

4つのうち3つ当てはまればkintoneで足りる。足りない場合も、全部を作り替える必要はない

4つの問い

相談を受けるときに確かめている4つです。3つ以上当てはまるなら、kintoneで十分です。

11つのアプリで終わる業務が中心

問い合わせ管理・申請・日報のように、1つの表に書いて一覧で見られれば済む。受注→請求→入金と金額を次の業務へ渡していくなら、作り込みが要る。

2集計は1段まで

「案件ごとの合計」までなら足りる。案件→月→事業→会社全体と何段も積み上げたり、予算と実績を並べたりするなら、作り込みが要る。

3計算のルールが単純

金額×数量くらいなら足りる。原価の振り分け、分割の入金、月末でない締めの給与計算があるなら、作り込みが要る。

4作る人・直す人が社内にいる

社内の人が画面を自分で直せるなら足りる。直すたびに外注するなら、kintoneの良さが消える。

kintoneとERPの使い分けは3通り

kintone会計ソフト申請日報受注請求入金金額は手で入れ直す

A kintoneだけ

業務アプリは自作、お金の記録は会計ソフト。

4つの問いに3つ以上当てはまる会社。いちばん速くて安い形です。

kintoneERP申請日報受注請求入金連携でERPへ渡す

B kintone+ERP

受注から入金まではERP、部署ごとの細かい業務はkintone。

現場が自分で作りたい業務があり、お金の数字は1本にしたい会社。導入前に注意すべき点などはこちらにまとめました。

ERP申請日報受注請求入金会計ソフト・チャットへ

C ERPだけ

取引も日報も1つの仕組みに。会計ソフトやチャットは外に残してつなぐ。

またぐ処理が多く、社内に作る人がいない会社。私たちはこの形です。

すでにkintoneを使っていて足りなくなってきた会社も、全部を移す必要はありません。受注から入金までだけをERPに寄せ、ほかはkintoneに残す(B)で足りることが多い。移す範囲を絞るほど、費用も期間も小さくなります。SaaSを1つに決めず、業務ごとに向いた道具を組み合わせる。これが私たちの考える新しいSaaSの使い方です。

この記事を書いた会社の仕事

分け方も含めてプロの視点でご提案します

kintoneで足りる業務、ERPにまとめた方がいい業務、その組み合わせ方。いま使っているツールと、いちばん手間のかかっている作業をうかがい、どこをkintoneに残してどこをERPにするかまで具体的にご提案します。kintoneで足りる会社には、そうお伝えします。60分の無料相談です。しつこい営業はしません。

出典:kintone 料金・kintone 公式(2026年10月30日に確認・税抜)。当社のERPの本番データベース(2026年9月10日時点。PL区分8・科目40・実績1,621行・案件181件・明細178行・日報2,152日分・時間配分1,672行・会計ソフト発行88件・議事録121本)。取引先名・個人名・人数は伏せています。

この記事を
書いた人

木谷 真也(株式会社Emposy 代表取締役)

自社の基幹システムの要件定義書を自分で書き、毎日使っている。営業・経理・案件管理・日報・AI相談までを自社開発の基幹システム1つに集約して会社を回し、その経験をもとに中堅・中小企業の自社専用ERP開発を請けている。東京・大阪。サービスについて

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