この記事でわかること
- kintoneでERPは作れるのか。作れる。ただし「つなぐ」部分は自分たちで作ることになる
- 簡単に作れる業務と、作り込みが増える業務の違い。1つの画面で終わるか、画面をまたぐか
- kintoneで組むと手間が大きくなる4つの業務(当社の実例)
- 人数が増えると、利用料はどう伸びるか。公式の料金で10人〜100人の年額を計算
- 自社はkintoneで足りるかを判定する4つの問いと、kintoneとERPの使い分け3通り
「kintoneでERPは作れるか」と聞かれたら、私たちは「作れます」と答えます。そのうえで、どこまで作るかで手間と費用が大きく変わるとお伝えしています。この記事は、自社のERPを作って毎日使い、ほかの会社のERPも作っている開発会社の立場で書きます。kintoneで足りる会社には、そう書きます。
作れる。ただし、業務と業務を「つなぐ」部分は自分で作る
kintoneは業務ごとの画面を作る道具。ERPは受注から入金までを1本につなぐ仕組み。kintoneでERPを作るとは、そのつなぎを自分で作ること
kintoneとERPは、そもそも何か
kintone(キントーン)は、サイボウズという会社のクラウドサービスです。入力画面と一覧表を、プログラムを書かずに自分で作れます。kintoneではこの画面1つを「アプリ」と呼びます。問い合わせの管理、日報、備品の申請のように、1つの業務に1つのアプリを作って使います。
ERPは、受注・請求・入金・原価・給与のような会社のお金に関わる数字を、1つの仕組みでつないで管理するシステムです。日本語では基幹システムとも呼びます。
kintoneで作ると、つなぎ目が自社の仕事になる
kintoneで「受注」「請求」「入金」のアプリを作ること自体は、難しくありません。手間がかかるのは、アプリとアプリのあいだです。受注の金額を請求に引き継ぐ。入金されたら請求を「済み」にする。月ごと・事業ごとに売上を集計する。ERPなら最初から入っているこのつなぎを、kintoneでは自分で作ります。
1つの画面で終わる業務はすぐ作れる。画面をまたぐと作り込みが増える
境目は「その業務が1つのアプリで終わるか」。またぐ処理が増えるほど、プログラムや追加の部品が要る
すぐ作れる業務、作り込みが要る業務
| 業務の形と例 | kintoneでの手間 |
|---|---|
1つの画面で終わる問い合わせ管理、備品の申請、日報、顧客の一覧 | 小さい画面の操作だけで作れる |
別の画面の値を引いてくる受注に顧客名を入れると、住所や担当者が出る | 小さい標準の機能(ルックアップ)で足りる |
画面をまたいで集計する案件の売上を月別にも事業別にも出す。予算と実績を並べる | 大きいプログラムか追加の部品(プラグイン)が要る |
ほかのシステムと往復する会計ソフトに請求書を発行し、入金を受け取る | 大きいシステム同士を自動でつなぐ仕組みを作る |
※ ルックアップ:別のアプリに登録した値を選ぶと、関係する項目がまとめて入る機能。プラグイン:kintoneに機能を足す追加の部品。他社が作ったものを買って入れることが多い。
私たちが「kintoneでは割に合わない」と判断した4つの業務
どれも作れなくはない。共通点は、1つのアプリで終わらないこと
kintoneで組むと手間が大きくなる4つの業務
私たち株式会社Emposyは、2026年7月から自社で作ったERPを使っています。作る前に、kintoneのような道具で組む案も考えました。そのうえで作れるが割に合わないと判断したのが次の4つです。図のオレンジの部分が、kintoneでは自分で作り込むところです。
自社の区分で見る損益
kintoneだと会計ソフトの科目と自社の区分の対応表を別に持ち、実績を取り込むたびに振り分ける計算を作る。1つの科目を金額で2つの区分に分ける処理も作り込みになる。
当社の規模:区分8・科目40・実績1,621行
案件の明細ごとの金額と入金
kintoneだと1つの案件に請求が何回もあり、明細ごとに請求日と入金日が違う。入金のたびに対応する明細を「済み」にし、案件別・月別・事業別の集計も別に作る。
当社の規模:案件181件・明細178行
日報から出す給与と人件費
kintoneだと人によって書き方が違う日報から勤務時間を拾い、25日〜翌24日の締めで給与を出す。同じ時間を案件ごとの人件費にも振り分ける。
当社の規模:日報2,152日分・時間配分1,672行
外のサービスとの往復
kintoneだと会計ソフトへの請求書の発行、議事録の読み込み、チャットへの通知を、それぞれプログラムでつなぐ。どちらの記録を正とするかも決めて作る。
当社の規模:会計ソフトへ発行88件・議事録121本
※ 数字は当社のERPの本番データベース(2026年9月10日時点)。
共通点は「1つのアプリで終わらない」
4つとも、データが複数のアプリに散ります。kintoneで組むなら、アプリ間の集計と引き継ぎを自分で作り、業務が変わるたびに直すことになります。私たちは毎月のようにやり方を変えるので、最初からつながった仕組みを作る方が安いと判断しました。
利用料は人数に比例する。作り込みの費用は別にかかる
kintoneは1人あたりの月額。ERPに近づけるほど、利用料とは別に作る費用と直す手間が増える
公式の料金で、人数ごとの年額を出すと…
kintoneの料金は、使う人数×月額です。いちばん安いライトコースでは、プラグインやほかのシステムとの連携、プログラムでの作り込みが使えません。ERPに近いものを作るならスタンダードコース(1人月1,800円・税抜)が前提になります。
| コース | 1人あたり月額(税抜) | 最小人数 | 連携・プラグイン |
|---|---|---|---|
| ライト | 1,000円 | 10人 | 使えない |
| スタンダード | 1,800円 | 10人 | 使える |
| ワイド | 3,000円 | 1,000人 | 使える |
見落としやすいのは、作り込みと直す手間
上の金額は利用料だけです。またぐ処理を作るなら、プラグインの購入費や、プログラムを外注する費用が別にかかります。さらに、業務が変わるたびに直す手間が続きます。kintoneの良さは「社内の人が自分で直せる」ことです。作り込みが増えて外注しないと直せなくなると、その良さが消えます。
比べるときは、5年分の利用料+作り込みの費用+直す手間を並べてください。ERPの費用の内訳と見積書の見方は別の記事に書いています。
自社はkintoneで足りるか——4つの問いと、3つの使い分け
4つのうち3つ当てはまればkintoneで足りる。足りない場合も、全部を作り替える必要はない
4つの問い
相談を受けるときに確かめている4つです。3つ以上当てはまるなら、kintoneで十分です。
問い合わせ管理・申請・日報のように、1つの表に書いて一覧で見られれば済む。受注→請求→入金と金額を次の業務へ渡していくなら、作り込みが要る。
「案件ごとの合計」までなら足りる。案件→月→事業→会社全体と何段も積み上げたり、予算と実績を並べたりするなら、作り込みが要る。
金額×数量くらいなら足りる。原価の振り分け、分割の入金、月末でない締めの給与計算があるなら、作り込みが要る。
社内の人が画面を自分で直せるなら足りる。直すたびに外注するなら、kintoneの良さが消える。
kintoneとERPの使い分けは3通り
A kintoneだけ
業務アプリは自作、お金の記録は会計ソフト。
4つの問いに3つ以上当てはまる会社。いちばん速くて安い形です。
B kintone+ERP
受注から入金まではERP、部署ごとの細かい業務はkintone。
現場が自分で作りたい業務があり、お金の数字は1本にしたい会社。導入前に注意すべき点などはこちらにまとめました。
C ERPだけ
取引も日報も1つの仕組みに。会計ソフトやチャットは外に残してつなぐ。
またぐ処理が多く、社内に作る人がいない会社。私たちはこの形です。
すでにkintoneを使っていて足りなくなってきた会社も、全部を移す必要はありません。受注から入金までだけをERPに寄せ、ほかはkintoneに残す(B)で足りることが多い。移す範囲を絞るほど、費用も期間も小さくなります。SaaSを1つに決めず、業務ごとに向いた道具を組み合わせる。これが私たちの考える新しいSaaSの使い方です。
この記事を書いた会社の仕事
分け方も含めてプロの視点でご提案します
kintoneで足りる業務、ERPにまとめた方がいい業務、その組み合わせ方。いま使っているツールと、いちばん手間のかかっている作業をうかがい、どこをkintoneに残してどこをERPにするかまで具体的にご提案します。kintoneで足りる会社には、そうお伝えします。60分の無料相談です。しつこい営業はしません。
出典:kintone 料金・kintone 公式(2026年10月30日に確認・税抜)。当社のERPの本番データベース(2026年9月10日時点。PL区分8・科目40・実績1,621行・案件181件・明細178行・日報2,152日分・時間配分1,672行・会計ソフト発行88件・議事録121本)。取引先名・個人名・人数は伏せています。
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